若桑氏講演会後、あれこれ | 共同合宿所

若桑氏講演会後、あれこれ

で、若桑氏の講演会にまつわりいろいろ思ったことなど。


質疑応答で、親学批判のところで、「女性に母乳を強制させるのはおかしいが、かといってここにいる人たちに母乳が悪いような(母乳で育てる必要がない)印象も与えるような心配もしまして」と挙手して発言した女性がいた。

若桑氏は、「母乳がいいのは当たり前ですが、ここはそういう文脈でないのは明白です」とあきれるようにばっさり切り捨てた。

要は女性のライフスタイルの選択についていかなる強制も許されないし、働く女性を家に引き戻そうとすることが問題である。ということなんだろうが、しかし若桑氏は、「働く女性や母乳の出ない女性に対し、母乳で育てろなんて、私たちは牝牛じゃないんだ」

と、”牝牛”ということを結構強調していたように思う。

(たぶんこういう物言いに、母乳教の人たちは敏感に反応してしまうのだろう。)

が、それにしても、ならば逆手にとって、「だったら働く場所に、搾乳する場所・時間を与えよ」という要求に変わっていってもよいのではないだろうか。

「女は牝牛じゃない。働くなら粉ミルクでもいいでしょう。私は母乳が出ませんでした。粉ミルクでもうちの子供二人は健康に成長しました」・・・なんかな~、粉ミルク世代の人らしい発言だけれど、今の出産現場が医療化して母乳指導が全然できていない問題をひしひしと感じる。


もちろん、親学なんてありえないので、ライフスタイルへの介入は許されないのだが。


そこで、先日友人が、「親学とか安倍的なものを非常に評価している」と言い出し、激論になったのを思い出す(笑)。その男性は、とにかく最近の親のモラルの低下はひどいと。まずは親の教育だと。そして、「日本人は論語を読まなくてはいけない!」と主張したので、のけぞってしまった。

また、ちょっと年配の女性が、「女性がバス停で化粧をしていたの。こういうのってどうなんだろう。注意したかったけど・・」と言ったので、私は「でもそれをいけないと説得できる理由がまったくみつからない」といった。するとまた例の男性が、「いけないことはいけないって言うだけでいいんだ!」ときた。理由もなく頭ごなしに怒って何がいいんだ?こういう時代になってくると、若い人でさえも、精神主義的なところによりどころを求める人が出てくるのもいたしかたないのだろうか、と思ってしまい、ますます安倍氏の進めていることは危険だと思ってしまう。

とにかく、彼の主張は親学だ。要は、親がちゃんとしていればいい、怖い近所のおじさん、おばさんなんて不要なのだ、というのが友人の考え。究極の理想論やなあ。

それにしても、彼にはまだ小さい娘がいるが、自分はしっかりしつけているつもりjなんだろう。そこがたぶん親という人種の勘違いなんだろうな。(子供なんて親のいないところでは、ひどいもんなのに、と他人の子供を預かってほんとによくわかった)。

だからこそ、近所の怖いおばさんや通りすがりの怖い他人も必要であり、親だけバッシングしてるのはおかしいだろ、といいたくなるのだが、どこまでいってもかみ合わない私たち(笑)。


・・さて、ジェンダーフリーという言葉。講演会での質疑応答の際に、このバックラッシュにあって、学者達はジェンダーフリーという、言葉をどんどん肯定的に使っていく、と締めていて、なるほどな、と思った。上野千鶴子が、ジェンダーフリーとはフェミニズムの中でもアキレス腱だった、と言っていたから。

研究者にとっては否定的な言葉であっただろう。正しくない英訳(和製英語)、バックラッシュの意図的な混同、世間での混同。

昨今のジェンダーフリーバッシングの有り様にいかなる言論統制も許されないが、かといって、研究者の中でも合意の取れていなかった言葉、を敢えて今さら研究者が強化していって、それがなんぼのもんなのか。別の言葉が必要なのかもしれない。


そういや先日アンケートを集計していて、のけぞったことがあった。いろいろなアニメキャラクターなどを評価してもらうアンケートだったのだが、とあるキャラクターのところで、「まさにジェンダーフリー!男女ともに使えてよい」とのコメント。

おそらく、「ユニセックス」ということが言いたかったのだと思う。やはり世間は混同している人が結構いるらしい。

ところで、キッズ向けキャラクター市場は、ユニセックスキャラが強い。ポケモンや、アンパンマンや、最近特に人気のスティッチとか。市場を作ろうとする側は、性別でキャラクターを固定化しようとするが、それとは裏腹に、世間では男女両方に人気が出てきたりするものだ。

もちろん、男の子にはレンジャー系キャラは根強いが、どうも時代遅れな感じがする。まあ強くありたいという幻想にすがりつかせてあげてもいいけどね。そういや若桑みどりが、ガンダム好きな男の子をちょっと小馬鹿にしていたっけ(笑)。

だったら、いまどき、「♪全然、いくさ(戦)にゃ、向いてないけど~」の、ダンゴ剣投げて皆を幸せな気持ちにさせてしまう、「ぜんまいざむらい」 の方が、シュールでカッコイイ。幻想を見続けるテレ朝と、現実に対応したNHKの違いなんだろうか。

ともあれ、ユニセックスがジェンダーフリーにつながっていくかもしれないし、アンケートの回答はあながち間違いではなかったりして。いや、でも、やはり、ジェンダーフリーという言葉は終わってしまっているように思う。