おひとりさまの老後 | 共同合宿所

おひとりさまの老後

いまさらながら「おひとりさまの老後」(上野千鶴子著)を読む。「おひとりさま」という卓越したネーミングのせいだろうか、いまだ本屋のよい場所に積んであったりするヒットセラーらしい。内容的には、通勤の行き帰りで読める軽~い本だ。

私自身にとっては、一人になることを恐れる必要はない、という勇気を与えられただけで十分価値ある本だったように思う。
独身、孤独死・・人はなぜ、一人になることをそんなに恐れるのだろう。私なんかは、世間の洗脳、陰謀じゃないかと思うけど。
たとえパートナーがいようとも、相手は先に死ぬかもしれないし、そもそも、生きて別れてしまう可能性だってある。子供は当てにならない。(というか家を出ていってくれればその自立を喜びたい。)結局、独身でいようと、結婚してようと、いづれは「おひとりさま」になる。上野のよく言う、生涯独身であっても、まわりがいずれは未亡人になって、結局は同じ状態、つまり「周回遅れのランナー」状態となるわけである。

そうなったときに、いかに「一人の時間」を楽しめる精神的に成熟した人間になれるのか。
上野いわく、友人といった資産は重要である。かといって程よい距離で。個室と一人の時間を重視しつつ、ときどきお友達。
どんな住宅に住み、どんな施設を選ぶか(もちろん、お金という資産がある程度必要なものの)。
そして、どんなケアを受けるか。介護を受ける十か条。いかに気持ちよくしてもらえるか要求していく重要性を説く。

アマゾンの読者レビューを見ると、意外に不評だ。結局は、どうせ、上野には、お金や友人など資産があるからね、という冷ややかな見方が多い。要は強者であると。あと上野の男性遍歴自慢に(あんなの自慢のうちにも入らないっつーの)辟易してる人など。
この経済状況や、福祉への絶対的不安など、悲観的な面が先にきてしまう。これが現実か。金どころか、上野氏のような人脈もない。が、しかし、だからといって、おひとりさまはお金や友人がなくたって、やっていけるんじゃないか。家族にぶらさがることをあたりまえと思っていた人にとっては、一人の老後はなおさら恐怖なのか。
誰にも後ろ指差されずに、一人であることに胸張って生きていきたいものだが。

特に気に入ったのは、「歳取ったら、男とか女とかいうジェンダーは脱いでしまえばいい」。歳とってまで、男を立てる、とか、そんなジェンダー規範まで気にして生きる必要はないと。
そんな楽な日が来るか、と思う自分はジェンダーに苦しめられているのだな、とあらためて実感し、歳を老いていくことが楽しみになる次第である。