6/28日経の社説 婚外子差別放置と日本の「結婚」(チェンジ少子化) | 共同合宿所

6/28日経の社説 婚外子差別放置と日本の「結婚」(チェンジ少子化)

日経の6/28の社説に、婚外子差別の問題を掲げ、「チェンジ少子化 日本の「結婚」は今のままでいいのか」、という記事が掲載されてたというので、慌てて片付けてあった新聞を引っ張り出す。

記事を要約すると、

欧米と比べ、日本は婚外子の割合が極端に低く(2%)、少子化問題を考えるとき、婚外子や結婚の多様化の問題を避けては通れない。
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婚外子が少ない一因は、嫡出子の1/2の相続差別があるからだ。相続差別はフィリピンと日本だけだ。
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相続差別は法の下の平等に反すると批判されてきており、法制審議会も1996年に規定を撤廃するよう答申を申し出た。しかし最高裁大法廷が合憲の判断を下し、答申はたなざらし。政治の怠慢である。
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欧米で婚外子が増えているのは法的差別がないだけでなく、スウェーデンのサムボやフランスのパクスなどの結婚とは別の形のカップルを法的に認める仕組みが生まれたからだ。
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婚外子の割合が増えたからと言って出生率が高まるとは必ずしもいえないが、フランスもスウェーデンも出生率は高い。
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一方、日本は、法制審が答申した「選択的夫婦別姓」の制度も実現していない。「家」を基本にした戦前の家族制度が影を落としている。06年の内閣府世論調査では、婚外子相続規定については41%が変えない方が良いと答えている。これが日本人の家族観、結婚。
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日本の結婚のあり方が少子化の一因となり出生率上昇の妨げになっているとすれば、障害を取り除く必要がある。婚外子の相続差別をなくさねば始まらない。(要約おわり)



世界に悪名高い「婚外子差別」が今だに解消されないのは、政治の怠慢。これは正しい指摘。
サムボやパクスなどカップルのあり方の多様化を認めたことで、同棲婚中の出産が増え出生率に貢献する、というのも正しい指摘であろう。ただし、社説においては、「婚外子の割合が増えると出生率が高まる」という断定は避けたようであるが、これについては私のかねてからの持論の通り、肯定したい。
何より、婚外子の相続差別をなくさねば、という優先順位の付け方自体は素晴らしい。

しかし、「婚外子が少ない一因は、嫡出子の1/2の相続差別があるからだ」という認識は正しいのだろうか。もちろん、正しい側面。が、まず、相続差別というより、婚外子差別、という方がこの際、正しいかもだ。実は婚外子差別をなくしたところで、婚外子が劇的に増えるとも思っていない。
戦前はこの日本でも7%まで婚外子がいた。相続は家督相続制で、婚外子には相続の権利すらなかったのだ。
では、なぜ7%あったかというと、妾が認められていたからだと私は思っている。
つまり、戦前は<現代よりも>、貞操観念にとらわれず、カップルのあり方が自由で<語弊があるが>、かつ、シングルマザーが生きやすかったということではないか、と。

残念ながら、この社説にはシングルマザーという視点が欠落していたと思う。ひとり親家族への支援が充実している北欧諸国などの出生率の高さを考えると、カップルに属しない生き方も広く認めるべきである。
またフランスなどは生涯独身であろうと尊敬される成熟した社会である。
つまり、婚姻の有無やパートナーの有無にかかわらず、生き方の多様性を認めることは、婚外子をも含む、出生率に貢献するのだ。
そういう意味で、あくまで「結婚のあり方」の枠の中だけにこだわって、婚外子問題や少子化問題を語るには、いささか腑に落ちない点ではあるのだ。「結婚とは別の形のカップル」、すなわち「事実婚※」の子どもの差別をなくせ、と言っている文脈においては、婚外子であろうとカップルに属していて当たり前、という既成概念から逃れられていない。男に属しない出産など眼中にもないのであろうかと。
(※注:事実婚も、男に属するカップルの形、と言えます)